S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
「はい! 芙蓉は私にとって一番大切な場所ですから。本当は厨房も手伝いたかったんですが、私はどうも繊細なお料理に向いていなくて……。冷蔵庫にあるものでパパッと作る家庭料理は得意なんですけど」
「ははっ、和葉らしいな」
柾樹のほがらかな笑顔を前にしたら、無性に彼に聞いてほしくなった。
これまで、自分から積極的に語ったことなどなかった過去を和葉は話し出す。
「――私がおじいちゃんと暮らしはじめたのは、八歳のときなんです。それまでは母とふたりで暮らしていたんですが……その頃の記憶がほとんどなくて」
「記憶障害か」
柾樹はあまり驚いた様子はなかった。医師である彼にとっては、それほど珍しい症状ではないのかもしれない。それに、人間の記憶は案外と不安定で不確実なものなのだろう。
「はい。母のことも、どんな暮らしをしていたのかも、よく覚えていないんです。薄情な娘ですよね。母はシングルマザーで、きっと苦労して育ててくれたのに」
「それは違う」
柾樹はきっぱりとした口調でそう言い切った。
和葉が弾かれたように彼を見ると、柾樹は真剣な顔で言ってくれた。
「記憶障害の原因はさまざまだ。大事な人だけを忘れてしまうケースだってある。自分を責めるようなことはしてはいけない。和葉のお母さんだって、そんなこと望んでないよ」
「……ありがとうございます」
「ははっ、和葉らしいな」
柾樹のほがらかな笑顔を前にしたら、無性に彼に聞いてほしくなった。
これまで、自分から積極的に語ったことなどなかった過去を和葉は話し出す。
「――私がおじいちゃんと暮らしはじめたのは、八歳のときなんです。それまでは母とふたりで暮らしていたんですが……その頃の記憶がほとんどなくて」
「記憶障害か」
柾樹はあまり驚いた様子はなかった。医師である彼にとっては、それほど珍しい症状ではないのかもしれない。それに、人間の記憶は案外と不安定で不確実なものなのだろう。
「はい。母のことも、どんな暮らしをしていたのかも、よく覚えていないんです。薄情な娘ですよね。母はシングルマザーで、きっと苦労して育ててくれたのに」
「それは違う」
柾樹はきっぱりとした口調でそう言い切った。
和葉が弾かれたように彼を見ると、柾樹は真剣な顔で言ってくれた。
「記憶障害の原因はさまざまだ。大事な人だけを忘れてしまうケースだってある。自分を責めるようなことはしてはいけない。和葉のお母さんだって、そんなこと望んでないよ」
「……ありがとうございます」