二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
 涼が香澄の家に来てから、香澄による無意識塩対応の数は、もはや両手では数えきれなくなっている。
 最近の事例だと、涼が香澄に「一緒にお風呂に入らないか?」と誘った時。
 繋がることは出来なくても、妊娠中でも香澄が安心して使えるボディーソープを使って洗い合いっこをしたり、香澄のむくみを取るマッサージを湯船の中でしてやることはできる。
 あそこが大きくなるのは、お互い目を瞑るとしても。
 お腹にも優しいスキンシップを繰り返しながら、自分も香澄も安心し合える関係に近づきたいと、涼は思っていたのだ。
 ちなみにその日は、香澄にロマンチックな気分に浸ってもらおうと、お風呂用の可愛いキャンドルや、防水スピーカー、妊娠中でも使える泡風呂用の入浴剤もバッチリ用意していた。
 女性はそういうのが好きだと言う情報は、これまでの経験から身についていたから。
 もちろん、香澄から「なぜ知ったの?」と聞かれた時は、便利な「密林だよ」という言葉を使う気満々だった。
 わざわざ香澄を不安にさせる必要は、ないから。
 というわけで、涼は香澄の「ありがとう、涼先生」の言葉が聞きたいがために、いつも以上に風呂をピカピカに磨き上げた。
 それから全てをセッティングし終わった後で、2階に駆け上がり、香澄の部屋の扉をノックした。

「今日は、一緒にお風呂入らない?」

 香澄には、極力どストレートに伝えるようにしていた。
 駆け引きとかしていたら、確実に香澄は
 ところが、香澄から返ってきたのは

「すみません!仕事なので今日は無理です」

 早口でのお断りだった。 
 しかも、よくよくドア越しに聞いていると、どうも誰かと話をしていうようだった。
 専門用語なのだろうか。
 イベントがどうたら、広告効果がどうたらと香澄が話しているのは分かったので、おそらく仕事相手とミーティング中だったのだろう。
 それ以上声を出してミーティングの邪魔するのは、いくら涼でも良くないと分かっている。仮にも弁護士なのだから。
 なので、そのままメッセージで「お風呂入れそうになったら教えて」とだけ送った。
 それから、数時間経っても、この件で香澄から返事は返ってこなかった。
 せっかくの泡風呂はただの風呂になってしまっていた……。
< 17 / 167 >

この作品をシェア

pagetop