二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「涼先生?このバスローブですが……」
「色、気に入らなかった?」

 色は、搾りたてのミルクのような色をしていた。

「いえ!色はとても綺麗なのですが……」

 香澄は、まだ生まれたてすっぽんぽん姿であるにも関わらず、袖を通すことを躊躇った。

「もしかして、シルクですか?」

 ツヤツヤに光り、肌触りの良い生地は、普段香澄が身につけている服とは全く違うものだった。
 触れるだけで、肌に吸い付く感覚が、涼の手のひらの皮膚と似ている気がした。

「そうだよ」

 シルクのバスローブ。
 香澄があのスイートルームの一夜についてWEB小説を書いた時、涼をモデルにしたキャラクター、リュウに着せるべき衣装を探す時にネットで調べたことがあった。
 金額の桁が、香澄が着ている人工化繊の服とは違うという知識は、よく覚えていた。
 
「こ、こんなの着られないです!」

 香澄は涼にバスローブを返し、普段着慣れているジャージを探すために洗面所に戻ろうとした。
 乾燥機付き洗濯機の中に、ちょうど洗ったばかりの香澄の服があることを思い出したから。
 ちなみに、この洗濯機は香澄が知らない間に買い替えられていた。
 犯人は、いわずもがな。

「どうして?」

 歩き出そうとした香澄の細い手首を掴んだ涼は、そのまま自分の腕の中に香澄を閉じ込めた。
 むき出しの胸に、涼の肌がしっかりくっついている。

「私が着るべきじゃないからです」
「誰がそんなこと決めるの?」

 そう言いながら、香澄をソファに無理やり座らせた涼は、香澄が次に何かを言う前に、ささっと器用にバスローブを羽織らせてしまった。

「うん。よく似合ってるよ」
「そ、そういうことではなくて……んんっ!」

 香澄が涼に言葉を言う前に、涼は口を塞いだ。
 香澄の力が抜けるように、涼は香澄の口内に快感を与え続けた。
 香澄が涼のキスに夢中になり始めたのを、香澄の舌の動きで確認した涼は、あれよあれよという間に、香澄の腕にバスローブを通すことに成功した。
 その事に香澄が気づいたのは、涼の唇がようやく離れた数分後のこと。

「い、いつの間に……」
「僕が君に着せたくて買ったんだから、僕のために着て欲しいな」
「…………でも」
「でもは、聞かないから。僕の楽しみを奪う権利は、君にはないよ」
「涼先生の楽しみ?めちゃくちゃ高いバスローブを着せる事がですか?」
「そんなのは、フルコースのオードブルレベルだよ。本番は、これからだから」
「本番?」
「そ」

 そう言うと、涼はまた別の紙袋を取り出した。
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