二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「香澄……あなた、そのシャツ……」

 拓人が指さしたのは、香澄が着ているTシャツの胸部分にデカデカと居座ってるキャラクター。その名もにゃんこ姫。
 涼的解釈では、2本足で立って着物を着ているよくわかんない生物となっている。
 しかも、おそらくそれと同じ、透明な袋に入って折り畳まれたTシャツを香澄は持っている。

「あ、これですか?実はこの間ツイツイの公式垢の懸賞で当てまして……それでですね」

 拓人はこの時点でやはり嫌な予感がした。
 香澄が、さっき歩く公害と何をしていたかは、タオルだけの半裸で堂々と佇んでいる歩く公害を見れば一目瞭然。
 そして、涼が何を悩んでいたかも、いやでもよく知っている拓人は、香澄の欠点……例え直前で三次元的ラブシーンを実践していたとしても、すぐに涼の心を抉るかのごとく、目の前に推しがいればそちらに夢中になってしまうことに、頭を抱えたくなった。
 涼が絡まなければ、むしろ仕事のモチベにも繋がるし、推しを語る香澄の笑顔を見ていればほっこりする拓人だったが、流石に今の今だけは、香澄にも空気を読んでもらいたいと思った。

(これが、コミュ障のなせる技……!?)

「先輩」

 香澄は、袋詰めされたTシャツを拓人に見せる。

「……何かしら?」

 嫌な予感がした。

「これ、良ければ貰ってく」
「ストップ香澄!ストップ!」
「え?」
「どうして、このタイミングで私にそのTシャツを渡すの?」

 そう言いながら、拓人は視線を涼に向ける。
 香澄にも同じように視線を涼に向けてもらうため。
 やはり拓人の予想通り、再び不機嫌MAXな涼が降臨していた。
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