二次元に妻を奪われたくないスパダリ夫は、壮大すぎる溺愛計画を実行する
「どうしてって……先輩と次会えたら渡そうと思って……」

 香澄は、そこでようやく気づいた。
 涼がものすごい不機嫌顔で拓人を見ていることに。

「あの……涼、先生……?」

(また私、失敗した……?)

 恐る恐る香澄が声をかけると、涼は拓人にはぜっっったいに向けないような笑みを浮かべた。
 それを見た拓人は「げっ……」とセンブリ茶を飲んだ時に見せるような顔を惜しげもなく披露した。

「ねえ、香澄」
「は、はい……」
「それなんだけど」

 それ、という指示語と共にTシャツを指さされたので、香澄はこのTシャツを自分が着た事が悪かったのかと解釈した。

「す、すみません……似合ってませんか?」
「香澄そうじゃない!それじゃないわ!」
「え?」

 拓人のツッコミを遮るかのように、涼は香澄が持つ、拓人用に持ってきたと香澄が言ったTシャツを掴んだ。

「僕が着てもいいかな?」
「…………え?」
「ねえ、着てもいい?」
「いや、それは……ちょっと……」

(涼先生には着せるなと、全世界から責められる気がする……!)

 そう考えた香澄は、拓人に助けを求める視線を送るが「諦めろ」と言いたげに拓人は首を横に振った。
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