ゴミと宝物
「おかしいな。ここに置いてたはずなのに……」

 彼は、キッチンのカウンター周りを慌ただしく行ったり来たりしていた。

 引き出しを開けたり閉めたり、耳にも目にもうるさい。

 仕事を持ち帰り、パソコンの前で集中していた私は、その彼の忙しなく何かを探す姿にイライラとした。

 視界に彼が映ることが、その時は無性にうっとうしくて仕方がなかった。

 ゴミ箱まで漁ろうとする彼に、
 
「なにを探しているのよ?」

 と、冷めた目で問いかけた。
 
「俺のコレクションだよ。ほら、ここに綺麗なあれを置いてたんだ。もしかして、君、捨てたのか!?」
 
 そう言われても、全く心当たりがなかった。めんどくさい男だなと思いながら、だんまりを決め込む。
 視線はパソコン画面だ。
 
「ほら、エナジードリンクのプルタブだよ!」

 俺のコレクションの、綺麗なやつ、と彼は続けた。
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