カサブランカで会いましょう。
 そこで清美はメールを書いてみた。

 『カサブランカの飼い猫 清美です。 ブログを初めて読ませていただきました。
チー友 増えるといいなあ。 まだまだだもんね。
 こんなことを言うと「俺は手いっぱいだ‼」って飼い主に怒られそうですけど、、、。
 良かったらまた来てくださいね。』

 「チー友か。 店の名前変えようかな。」 「何に?」
「チー友ショップ。」 「変なの。」
 「いつの間に来たのよ?」 「さっきから居ますけど何か?」
「幽霊じゃないんだからさあ、声くらい掛けてよ。 驚くじゃない。」 「お前が転がってるほうが驚くわ。」
「まあ、失礼なおっさんねえ。」 「失礼なおばさんねえ。」
「真似しなくていいのよ。 ダーリン。」 「真似しなくていいのよ。 メス豚ちゃん。」
「んもう、、、。」 清美はメールを閉じると風呂へ飛んで行った。
 「ブログねえ。 俺もやってみようかな。」 「あなたはやらないほうがいいわよ。」
「どっから声を出してんだよ?」 「口からよ。」
「そうじゃなくてだなあ、、、。」 「喧嘩終了ね。 明日のチーズケーキを作ってねえ。 ダーリン。」
「んもう、、、。」 「真似しなくていいからさっさとやりなさい。」
 やり込められるのはいつものこと。 俺が本気を出したら清見くらい簡単に泣かすことは出来る。
でもそれをやっちまったら男じゃなくなる。 だから手だけは絶対に出さないんだ。
え? 子作りはしただろうって? そりゃあ当然だよ。 夫婦なんだから。

 もう真夜中。 俺はチーズと睨めっこをしてます。
こいつがうまく出来なければ商売上がったりだ。 緊張する一瞬。
精魂込めて作ってもうまくいかないことだって有るんだよ。 全てがシミュレーション通りにうまくいくとは限らない。
ラーメン屋だって牛丼屋だってみんなそうさ。 出来合いを使ってるインチキ食堂は別だけどね。
 いつだったかなあ、オムライスを食べたくて近所の食堂に行ったんだ。 出てきたのが半分凍ってたから投げ付けて帰ってきた。
手抜きするなら客に見えないようにやらねえとダメだよ。 見え透いたら店の信用を落とすだけだ。
それにしても眠いなあ。 5時半まで清美の隣で寝ようかな。
ねえ、母ちゃん。

 そう思って清美の布団に入ってみる。 「重たいなあ。 誰よ?」
目を覚ましたのかと思ったら寝言らしい。 その寝顔を拝んでみる。
「よーく見ると可愛いやつだよなあ。 起きてる時はあれだけ憎たらしいのに。」 「そうよねえ。 あなただって相当に憎たらしいのに。」
「うわ、起きた。」 「なあに? 起きちゃダメなの?」
「ダメダメ。 寝てなさい。」 「じゃあ寝るわ。 お休み。」
 (ほんとに焦らせるんだからなあ。 こいつ。) 「抱いてもいいのよ。」
「誘惑してきた。」 「誘惑光線 キラ‼」
「ブ、何だいそりゃ?」 「清美ちゃんの誘惑光線でーす。 当たったら死ぬわよ。」
「十分に当たってますが。」 「大変ねえ。 明日は葬式だわ。」
「嬉しいだろう?」 「そりゃそうよ。 こんなうるさい変人が居なくなるんだもん。」
「言いやがった。」 「言われるようなことをさんざんにしておいて。」
「寝るんじゃなかったのか?」 「あなたのせいで寝られないのよ。」
「すんませんねえ。 じゃあ寝るわ。」 「はいどうぞ。」
 ヘンテコなヘンテコな夫婦がここに居る。 長年、この二人は離れることも別れることも無くこうしてくっ付いてきたんです。
おどけて回る清美と頑固で口うるさいマスターの二人三脚。 これからどうなることやら?

 次の日も午前中は寝ております。 まあそれはいつものこと。
清美はその間に買い物やら掃除やら雑用を済ませてしまうんです。 これだっていつものこと。
 2時になると店を開けます。 「待ってました‼」って人が飛び込んできます。
「今日もよろしく頼むよ。」 「何を頼むの?」
「奥さんに可愛がってもらおうかと。」 「やあねえ、持ち上げないでよ。」
「山下さん 腰悪くなるよ。」 「何で?」
「清美はお、も、た、い、から。」 「ああいう変なのはほっときましょうねえ。」
 清美は俺のことなんか気にせずに暑いタオルを持ってきた。 「目が覚めるなあ。 このタオル。」
「でしょう? 寝ぼけたままでチーズケーキを食べてもらいたくないから。」 「あっそう。」

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