若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜
「柊君、いろいろありがとう。」
帰りの車の中、柊生に花はお礼を言う。

「いや、当たり前の事をしたまでだ。
それより、行くのが少し遅くなってごめん。他の先生に責められてたのか?」

菜摘先生のパニックを目にしていたらしく、柊生は花を心配する。

「菜摘先生は私が妊娠してるって事だけ先に知っちゃったからパニックになっちゃっただけだよ。柊君が来てくれたお陰で誤解は解けたから大丈夫。」

「あの先生が花に辛く当たる人か。
何か後で言って来るようなら直ぐ教えろよ。」

どこまでも心配症な夫を見て花は微笑む。

「うん、ありがとう。」

「ついでに、どこかで食べて帰ろう。
食べたい物は?」

この頃、花の悪阻もやっと治りご飯も美味しく食べられる。

「うーん、ファミレス行ってみたい。美波先生が美味しいって言ってたハンバーグ食べてみたい。」

「花は安上がりだな。
ハンバーグだったら鉄板焼きの店だって食べられるのに。」

生活が変わっても贅沢をしようとしない花を柊生は感心している。

「せっかく食べられるようになったんだから、もっと贅沢すれば良い。」

「ファミレスだって贅沢だよ。
毎日ご飯を作らないだけでも贅沢だったんだから、これからはちゃんと自分で作るからね。」
悪阻の間ずっと、日替わりのケータリングだったから、なんて贅沢をしてしまったんだと花は反省しているところだ。

「俺だって花が作ったビーフシチューとか食べたいけど、仕事してる間は無理しない方が良い。普通の人より疲れやすいんだ。」
いつでも花を心配し思いやってくれる心が嬉しい。
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