乙女と森野熊さん

熊さんは箸を置くと、

「悪いが一切情報は教えられない」

そう言われて私はショックを受けた。

「あ、いや、単に真奈美がどこにいるのか、無事なのか知りたいだけで」

「乙女ちゃんが心配なのはわかっている。

彼女のその後について確かに俺は報告を受けている。だが捜査上知り得た情報を、第三者に教えるわけにはいかないんだ」

第三者、その言葉が酷く私を傷つけた。

家族では無い、と言われた気がして、当然なのにやはりそうだったのかと思ってしまう。

「乙女ちゃん」

熊さんの声は平坦なようで優しい。でも顔を上げたくない。

「俺は乙女ちゃんを家族と思ってないから第三者なんて言った訳じゃ無い。

これは花だったとしても、俺の親が生きていたとしても、言わない。

乙女ちゃんは事件に関わっているけれど、そういう内容は警察官として話すことが出来ないんだ、相手がどんなに心配して誰であったとしても」

いつもの無表情、淡々とした声。

だけど誠実に、私へそれが仕事なのだと伝えてくれている。

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