乙女と森野熊さん
「本当はこんな俺から乙女ちゃんを離すべきなのはわかっていた。
だけどあの椅子でポツンと座る乙女ちゃんを見て、俺は昔の自分を見ているようだった。
両親の葬式で一人、座布団に座っていた自分と重なった。
とても放っておけなかった。俺が乙女ちゃんの側にいればまた何か降りかかるかもしれない。だけど唯一生き残ってくれた乙女ちゃんが俺には希望に思えた。
俺がすべきことは乙女ちゃんを守ること。
幸せにしてあげて、花やご両親に少しでも報いて安心させなければならないって」
気が付けば私の目には涙が一杯溢れてて、それがぽろぽろと頬を流れるのに、目をそらしてはいけない、聞き漏らしてはいけないと私の身体全てが言っている。
「だけど、そんなのはきっと建前だ」
えっ、と声が漏れてしまった気がする。
「俺は単に寂しかったんだろう。
だから乙女ちゃんに一緒に暮らして欲しかったんだよ」