乙女と森野熊さん


「話を戻すけど、本当に公務員になりたいの?」

別に仕事がしたいわけじゃ無い。
大学生になれば遊ぶのが楽しそうと思っていたことがいけないと思うようになっただけだ、私には。

「なら大学に進学した方が良い。

大学で新たな出会いや学問に触れて、そこで急に自分の道を見つけることだってある。その時間を取れるのに、いますぐ就職する必要は無い」

即答しない私に、本当は就職したくないと気づかれた。
しなくていいならまだ気楽が良い。でも。

「乙女ちゃんが就職すれば、俺は一人になるんだな」

そんな言葉に驚いて熊さんの顔を見ても、特に表情は変わっていない。

「あ、いや、熊さんが良ければ会いに行くし」

「乙女ちゃんはそんなに俺と生活するのが嫌なのか?
なら家事も何もしなくて良い。自分の好きなことだけをすれば良い」

そんな風に言われるだなんて思わないから、どう答えるべきか悩んでしまう。

「別に家事をすることは嫌いじゃ無いし、そもそも熊さんはかなり手伝ってくれるし、好きなことさせてもらえてるし」

「なら何が不満?」

「不満なんて無いよ」

「なら何故?」

何か理由を言えば一つずつ潰されていく。
私は言うべきかどうしようか悩んでいるのだが、熊さんをちらっと見れば、素直に吐くまで逃さないというオーラを感じて私は困惑する。

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