乙女と森野熊さん
満たされても、だからといって私はここに居座ってはいけない。
私はきっと、熊さんが次に愛する人が出来るまでのつなぎだからだ。
それでも仕方なく引き取られていたより、何千倍も嬉しい。
「熊さんはさ」
私の声に熊さんが私に視線を向ける。
「熊さんなら大丈夫だよ、お姉ちゃんみたいな人、また現れるよ」
私は心からそう思って言ったのに、熊さんの眉間に皺が寄った。
「なんでそんなことを言うんだ」
「なんでって」
また怒ったような声に私は理由がわからない。いや、お姉ちゃんのことを言ったせいだろうか、そんなに簡単にお姉ちゃん以外を好きになることは無いのだと。
「お姉ちゃんを忘れて欲しくは無いけど、でも熊さんみたいな優しい人、熊さんが気づかないだけで好きだと思う人はいると思うんだ」
何故かまだ眉間に皺が寄っている。普通なら喜ぶ言葉じゃ無いのだろうか。
「えっと、怒ってる?」
伺うように言うと、熊さんは黙っている。
「別に熊さんがお姉ちゃんを忘れてるとか思ってないよ?」
「・・・・・・そうじゃない」
平坦な声で返されたけど、意味がわからなくて首をかしげる。