BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



「んー、とって」


オムライスを頬張る彼の口の周りはケチャップだらけ。ストロー越しに飲むジュースもボタボタとこぼしている。

慌てて、トレイに乗ったお手拭きでみっくんの頬を拭いたけど。スプーンの持ち方も子供みたいに、グーで握っている。
職場でも、前に食事をした時も、こんな食べ方汚くなかったのに──。




「どうしたんですか?いつも、ちゃんと食べてますよね……?」

「うん、頑張ってるからね。俺、食べるの苦手なんだよね。こう、スプーンとか箸って持ち方が面倒くさいっていうかさ」

「なに、子供みたいこと言ってるんですか?」

「えー、香江ちゃん食べさせてよ」


みっくんが"あーん"と口を開けて待つから、驚きを隠せない。
さっきまでの大人の余裕の雰囲気は何処にいったんですか?





「な?なにを、言ってるんですか?」

「今日は希乃ちゃんいないからね。香江ちゃんが寂しいと思ってね」

「……!?」


スプーンを持った私の手首を掴み引き寄せて、ぱくりと自分の口の中へ運ぶ。と、同時にペロリと私の指を舐めて嬉しそうに目を細めるから。恥ずかしくて、一気に全身の熱が上がる。





「俺が希乃ちゃんの代わりに甘えるよ」

「……私が寂しいからじゃなくて、み……みっくんが甘えたいだけですよね?」

「はは、バレた?」


子供みたいな彼を見て、"可愛い"と感じてしまう自分がいるのもどうかしていると思う。


< 122 / 179 >

この作品をシェア

pagetop