BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
希乃愛の眠る布団を囲むように私とお姉ちゃんが寝転がって、この小さな寝顔を見つめる。
愛おしそうにお腹をトントンと叩く姉の姿に、嬉しい反面、寂しい気持ちに襲われる。
「お姉ちゃん、ずっと聞きたかったんだけどね」
「……うん、何?」
この子を起こさないように、小さく口を開き言葉を続けていく。
「希乃愛のお父さんってどんな人だったの?」
「凄く駄目男だったわ」
「えぇ?駄目ってどういう……あ、お父さんは相手知ってるの?」
「……お母さんには少し話したけど、お父さんは知らない、と思う。あの人、既婚者だったのよ」
「き、既婚者ってお姉ちゃん不倫してたの!?」
思わず声のトーンが大きくなると、お姉ちゃんが「しっ」と人差し指を口元に当てた。
慌てて希乃愛の顔を見ると、眠りながらも口を動かす可愛らしい仕草をしている。あぁぁ、可愛い。
「最初は知らなかったのよ。妊娠した時にはじめて聞かされたの。実はまだ離婚していない妻がいるって」
「なにそれ最低!」
「でも、喜んでくれたのよ。赤ちゃんが出来て不安だった私に、絶対に産もう、結婚しようって喜んでくれて。別れるからとか時間が欲しいって言われて。全て整理したら家にきちんと報告と挨拶に来るつもりだったの」
お姉ちゃんがここまで一気に話して、大きな溜め息をついた。眉を下げて希乃愛に視線を向けながら、ポツリと言葉を落としていく。
「抜けてて頼りなくて優柔不断だったけど、……優しかったから。信じちゃった私に見る目がなかったのよね」