BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



「お、お姉ちゃんは悪くないよ!」

「でも、相手にも子供がいて慰謝料と養育費請求されるだろうし。もし、私にも慰謝料請求されたらと思うとさ、そんな情けない男に認知……とは考えられなくて」


しっかりしてる女の人って駄目な男に惹かれやすいって聞いた事あるけど、お姉ちゃんそういうタイプなのかな。

難しい事はよく分からない。
けど、認知しないで1人で育てようとしたのは真面目なお姉ちゃんらしい。結果、その状況が彼女を追い詰めてしまったのだろうけど。




「香江は、あの男の人と結婚考えてるの?」

「………!?な、何言ってんの?私、まだ20歳だよ?結婚なんて早いよ!」

「みっくん……三槻さんっていったっけ?希乃愛も懐いてて──。……………もし、私が帰ってこなかったら」

「……ん?」

「いや、三槻さんとても良い人なんでしょう?」

「まぁ、いい人だよ。優しいし……、そりゃ確かにいつかは結婚したいなーと思うけど、でもそんな具体的には」


と、ここまで言葉にして思い出す。
婚姻届のこと、みっくんにどこまで本気か聞きそびれた。て、あの婚姻届どこに置いたっけ?




「………お、お姉ちゃん。あのさ、友達の話なんだけど。婚姻届をサインして渡されるってどう思う?」

「……え、それプロポーズだよね?」

「違う!絶対違うんだけど!!流れでそうなっただけで…………って友達が言ってて、友達が…」


否定する自身の声がどんどん小さくなっていく。

お姉ちゃんが目を丸くして驚いている。あぁ、もっとオブラートに包んで相談すれば良かった。
友達の話と伝えた時点で、すでに私の話だってバレるよね。普通。




「まぁ、状況が分からないけど。流れでも冗談じゃ渡さないでしょう?結婚してもいいと思ってるんじゃないかな。私はそう思うよ」


希乃愛の規則正しい寝息が部屋に響く。「そのお友達、いいな羨ましい」なんて言葉を続けて小さく笑うお姉ちゃんに、胸がチクンとした。



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