BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



「……え?は?」

「1回でいいからみっくんって呼んでみて」

「主任、どうしたんですか?急に」

「"こーら!みっくん、ちゃんとしなきゃダメでしょう?"って」

「……えと、」

「そう言って、俺のネクタイ直して。そうしたら、これからも他の職員に内緒にしてあげる」


さっき希乃愛の撫でた手が、今度は私の頬に触れる。

──この人、何言ってるの?




「言ってくれないの?」


眉を下げてシュンとしている彼が、冗談を言っているようには見えなかった。まるで子供のように見えるから──、




「こ……、こーら!みっくん!ちゃんとしなきゃダメでしょう!?」


年上の男の人を"みっくん"だなんて、恥ずかしくて声が震えた。
両手を彼のネクタイに伸ばすと、ぐっと距離が近くなって緊張で手がモタモタしてしまう。それでも必死にネクタイをきゅっと絞めて手を離した。



「ははっ、お母さんみたいだね」

「みっくんのばーば?」

「いや、ばーばじゃなくて。(みっくん)のママのこと」

「みっくんのママー?」

「主任!お母さんみたいって、無理やり言わせたんじゃないですか!?」

「ははは!」

「"ははは!"じゃないですよ!」



< 16 / 179 >

この作品をシェア

pagetop