BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
「……やっと行きましたね。危なかったですね」
彼女達がお茶を入れ終えて給湯室を出ていくのを見届けてから、"ふぅー"と安堵の息を落とす。
「隠れなくても良かったんじゃないかな」
「何言ってんですか?こんなところで2人で話してるの見られたら最悪じゃないですか」
「さっき別に困らないって言ってたよ」
「それはっ……、これ以上、主任にご迷惑をかけられない……て、離してください」
嘘!?いつからこの体勢だったの?
壁に背中をつけた主任の腕の中にすっぽりと抱きしめられていた。
カチカチに固まっていれば「ごめん、ごめん」とクスクス笑われて、手をパッと離される。
「可愛いよね」
「え?」
「可愛いと思うよ」
「しゅ、主任、何を……」
「小さな子って可愛くて好きだよ」
一瞬、自分の事かと思って、希乃愛の事だと理解するのに時間がかかった。
「先、戻るね。そろそろクライアントとの打ち合わせの時間なんだ。これ、ありがとう」
スーツの上着が入った紙袋を持ち上げて、反対の手が頭にポンと乗せられる。
忙しい時間なのにすみませんという台詞が喉まで出かかってるのに声が出ない。
「俺といるの見られたら最悪みたいだから、時間差で戻っておいで」
穏やかな声のトーンに優しい微笑み。
何故だか心臓の音がうるさくて、すぐにその場を動くことが出来なかった。