BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
「そっか。じゃぁ、奈良崎さんのお家またお邪魔しようかな」
「いえっ、そういう意味じゃなくて」
慌てて両手を左右に振ると、主任がクスクスと笑うから。自分の頬が、かーーと熱が上がっていくのが分かる。
「希乃ちゃんの顔、また見たいしね」
「でも、この間の件で母に(冷やかしで)うるさく言われてて……」
そう。あの後、お母さんが主任を「良い人じゃない~」と異様に勧めてくるのだ。再び、主任が家なんかに訪問したら、お母さん勘違いしちゃうよ。
「そうなの?そんな感じじゃなかった気がするけど」
「あはは。えーと、主任は希乃愛みたいな小さな子、好きなん──」
"好きなんですか?"という台詞を言いかけたところで、ガチャッと給湯室の扉が開く。
華のある黄色い声が聞こえてきたと同時に、違う部署であろう女の子達が雑談しながら部屋に入ってきた。
「ねー、びっくりだよねぇ」
「ほんとほんとー」
「山崎主任、いーなーって思ってたのに残念」
「えー、でも噂でしょ?あんなまだ子供みたいな子相手にしないでしょ?頑張ってみたら?」
「あー、それねぇ」
タイムリーな話題が、きゃははと笑い声と共に室内に響き渡る。
危機一髪とはこの事。主任の体を力任せに引っ張って、食器棚の影に隠れて良かった。