BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~




「じゃぁ、また家で話聞くからね~」


嵐のように去っていった主任の母親。
希乃愛が今度は主任の足を掴んで、「こわいーー」と大きな瞳を潤ませていた。



「希乃ちゃんごめんね。びっくりさせちゃったね。みっくんのママ、希乃ちゃんに会いたかったみたいなんだ」

「みっくんのママー……」

「そう。みっくんを産んでくれたママだよ。みっくんのママ怖かった?」

「……こ、こわくない!!」


主任が希乃愛の頭を撫でて優しい声色を向ければ、希乃愛がキリッと表情を変える。



「じゃぁ、うさぎさん広場行こうか?」

「うさぎさん、いくー!」


うさぎの広場は自由に触れ合えるコーナーがあった。その柵内に入った希乃愛が、目をキラキラとさせてトンネルを覗き込んだりしている。
そんな希乃愛を見守るよう、主任と2人並んで立つ。



「あの、主任。お母さんと仲良しなんですね」

「ん?」

「わ、私の話とか、してたんですね」


アラサーにもなる男子が、普通 母親に日常的な事を話すだろうか。ましてや、異性と出掛ける報告なんてするだろうか。



「うん。新しく事務に入った女の子ってね。とても褒めてたよ。奈良崎さんみたいな子が俺のお嫁さんになればいいのにって」

「は?」

「俺ね、結婚1回失敗してるから。凄く心配されてるんだよ」

「……」

「奈良崎さんは、母さんのお気に入りみたいでさ」


彼が誇らしげに母親の事を語るから、一瞬思考が真っ白になった。

頭がクラクラする。信じらんない。


母さんのお気に入りって、一体なんなの──!?


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