BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
画面に表示には"お母さん"と表示されていて、この状況から逃げるよう通話ボタンを押す。
「も、もしもし……お、お母さんどうしたの??」
普段なら勤務時間中に電話なんてかけてくる事ないのに。
「今、仕事中なんだけど……て、え?」
耳元から聞こえてくる母の台詞に一瞬頭がフリーズする。
「は?な、なんで??いつ……?」
「いつから……いつから、いないの!?」
給油室に私の声が響き渡ると、廊下を歩いていたであろう社員がチラチラと顔を覗かせる。
「奈良崎さん、大丈夫?」
その場にペタンとしゃがみ込んだ私に、主任が心配そうに目線を合わせてきた。
どうしよう、どうしよう。頭が回らない。全身に力が入らない。
「おか、お母さんが……の、希乃愛が…いないって、きて」
「え、希乃ちゃんが?」
「どうしよう、わた、私がキツく言ったからだ。だって、希乃愛が嫌いって……だから私も」
「希乃ちゃんがどうしたの?」
私の両肩を持って、静かに落ち着いた声で主任が問いただすから。混乱した頭が少しずつ整理されていく。
「希乃愛がいなくなったって」
「……お母さんは何て?」
「えと、保育園から帰ってきて夕飯作ってる間1人で遊んでたけど、気が付いたらいなくなってたって」
「分かった。部長には俺から話しておくから、奈良崎さんはすぐに上がって」
「でも、仕事が、途中で……」
「大丈夫だから。早く帰って。上司命令だよ」