煩悩過多なイケメンは私に一目惚れしたようです【マンガシナリオ】

真尋「──あなたに一目惚れしました。入学してからずっと、如月さんを目で追ってしまいます。毎日、アレやコレと妄想がはかどって眠れません」

 花のエフェクトが舞い、キラキラと正統派王子様のような描写。
 言っていることはドン引きレベルだが。

 千華の頭の中で、モザイクがかかったアレやコレやが浮かぶ。
 ぼふん、と顔が赤くなった千華は、綺麗な九十度の角度で頭を下げた。

千華「ご、ごめんなさいっ!」
真尋「……」

 おずおずと頭を上げ、真尋を見る千華。

千華「ひ、一目惚れって言われても、私は御厨くんの事をそういう、た、対象として見てないというか……。だから、付き合うとかは今はまだ考えられない……です」
真尋「『今はまだ』ですよね?」
千華「え?」

 千華の腰へ右腕をまわして、左手で千華の右手を取る。千華が胸の前に抱えていた鞄が、二人に押し潰される。
 突然のことにびっくりしている千華をよそに、千華の右手首へと顔を近づける真尋。

千歌(え──)

 千華の手首の内側へ、キスをした真尋。
 そのまま上目遣いに千華を見る。

真尋「まずは友達からでいいです。俺がどれだけ如月さんを想っているか、これから行動で示していきます」

 何が起きたのかわからない千華。
 顔を赤くして口をパクパクさせる。
 そんな千華を見て、真尋は親指でキスをしたところをなぞる。

真尋「やっぱり想った通り。如月さんのココも柔らかいですね」

 ココ、は手首の内側のこと。
 色気を纏う笑みを浮かべた真尋。
 恥ずかしさからなのか、わなわなと震えている千華。

千華(何度も神様へ、友達が欲しいとは願ったけれど……)
(スケベなイケメンはいりません!!)

真尋「あ。今俺のこと、スケベだって思いました?」
千華「!? い、いや? おっ思ってないよ……?」
千華(本当はめちゃくちゃ思ってたけども!)

 目を泳がせる千華。
 そんな千華を気にもとめず、真尋は自分の事を話し始めた。

真尋「……今まで誰かに触れたいとか、思ったことがなかったんです。俺、女子に興味ないのかなって」

 はぁ、とため息をついた真尋。
 しかし一転、「でも」と声と表情を明るくさせる。

真尋「如月さんを一目見てから、色々と欲望が出てきて」
真尋「あぁ、俺もある意味健全な男子高校生だったんだなって」
千華「だからって、その健全さを私に発揮されても困るよ!?」
千華「手首にキ、キスとか!」

 ギャンッと真尋に抗議する千華。
 その言葉すら嬉しいような、雰囲気を出す真尋。真尋はするりと千華の頬を撫でた。

千華「ひゃぁっ」
真尋「如月さん」
千華「……っ?」
真尋「──大好きです」

 声も、ただよう空気感も、柔らかいのに。

 刃物を首筋に当てられたかのような衝撃を伴う、どこまでも危ない、艶めいている微笑みを浮かべた真尋。

 ストレートな好意をぶつけられて、再度顔が真っ赤になる千華。ううっ、としゃがみ込んで鞄に顔をうずめた。
 真尋もそばに片膝をつき、千華の様子を見て首を傾げる。

真尋「どうかしましたか? 如月さん」

千華(……クールで『そんな事』を考えてないように見えるのに)
(──煩悩過多な御厨くんは、恋愛初心者の私には刺激が強すぎる!)
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