この『恋』の言い換えをするならば『瑕疵』(かし)です

「…ちゃん…漸ちゃん…」



「…なに…?瑛茉…起きた?

熱は…?まだ、熱いね…」



「…ん…」



「なんか食べる?
まだ食べれないか…」



お兄ちゃんの声がする



「…漸ちゃん?」



「うん…」



お兄ちゃんがいる

なんで?



「瑛茉、病院行く?
だいぶ熱あるだろ」



うん…熱い…

ぜんぜん熱さがらない



「んー…んー…」



夢かな?

お兄ちゃんはいるはずない



熱が高すぎて幻覚が見えるのかな?

私、お兄ちゃんに抱きしめられてる?



身体が熱に包まれる



ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…



お兄ちゃんの音



熱はお兄ちゃん?



ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…



お兄ちゃん、看病に来てくれたの?



「瑛茉、心配
大丈夫?」



お兄ちゃんの言うこと聞かなかったのに
心配してくれてる



ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…



お兄ちゃんに何か言いたいけど
呼吸をするのも辛い



「んー…んー…」



「なに?瑛茉
大丈夫?」



やっぱり優しいね
お兄ちゃん



力ない手でお兄ちゃんの身体をギュッてした



「瑛茉?」



「漸ちゃん…ありがと…」



ドッ…ドッ…ドッ…ドッ…



「瑛茉が早く元気になればいい」



優しい手で私を撫でてくれる



もっと抱きしめてほしいと思ってしまう



「なんか、オレも熱い
汗かいた
シャツ着替えたい」



お兄ちゃんがベッドから出て
熱が逃げた



もっと抱きしめててほしかったと思ってしまう



シャツを脱いだお兄ちゃんが
ベッドからぼんやり見える



「瑛茉、大丈夫?」



「んー…漸ちゃん…
なんで…いるの?」



「コンビニで瑛茉の友達に会って…」



友達…

のんちゃん



そーだ

のんちゃんがお兄ちゃんに言ったんだ

私が熱で学校休むって



「オレ着替えてくる
瑛茉、水飲めたら飲んだ方がいいよ」



「ん…」



「食べたいのある?」



「ん…さくらんぼ」



「わかった買ってくる」



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