この『恋』の言い換えをするならば『瑕疵』(かし)です
「これ、漸ちゃんのぶんね
喧嘩しないように分けたよ」
お兄ちゃんが買ってきてくれたさくらんぼ
いつも私ひとりで食べてたけど
今日はふたつに分けた
「瑛茉の少ないじゃん
オレこんなにいらないよ」
「今までのぶん
漸ちゃん、ホントは食べたかったのに
我慢してたんでしょ」
「んー…
別にそんな、恨んだりしてないから」
「食べよ!
いただきます!
んー…おいしいね」
「瑛茉、少し顔色よくなったね
さっきだいぶ熱あったから心配だった」
まだ身体に残る
お兄ちゃんの感触
お兄ちゃんの熱
お兄ちゃんの匂い
ドッ…ドッ…ドッ…
お兄ちゃんの音
また身体が熱くなる気がする
「うん…もぉ大丈夫だと思う
明日から学校行けるかな…」
「無理するなよ
瑛茉の友達…のんちゃんだっけ?
今日も彼氏といたよ」
何も言ってないのに
のんちゃんと大西は
やっぱり付き合ってるように見えるのか
「仲いいよね…」
「なに?
なんか意味深な言い方
まさか三角関係とか?」
「ホントはね
のんちゃんが付き合う前に
私、告白されたんだ」
余計なことを言った
もぉどーでもいいことなのに…
お兄ちゃんに見栄張りたかったんだと思う
私だってモテるんだから…って
「へー…
なんで付き合わなかったの?」
「んー…なんでかな…」
「よくそれでも友達でいれるね」
「んー…
のんちゃん楽しそうだから
私も嬉しいよ」
「なら、いいけど…」