さよならの春 ぼくと真奈美の恋物語

エピローグ

 ぼくらは25歳になった。 真奈美が死んでから6年が経ったわけだ。
いつの間にか涼子は文房具売り場の主任になっていて、ぼくは主夫を選んだ。
そう、結婚したわけだ。
 2ldkの部屋を二人で探して借りた。 涼子は一緒に車も買った。
「このほうが猛さんも一緒に出掛けられるから安心ですよね?」 彼女はそう言って笑っている。
自転車はというと結局乗れないままで自転車屋に返してしまった。 ケガするよりいいか。
そして涼子が乗っていたバイクはサイドカーになった。 これで夏は山へ、、、。
急カーブとか急ブレーキにはいつもひやひやなんだけどねえ。
 結婚する時にぼくらは約束した。 6月には真奈美の墓参りに行こうって。

 「さてと、、、今日も気合を入れて頑張りましょう!」 彼女は毎朝、そうやって気合を入れている。
ぼくはそんな涼子を見ながら朝食を作る。
付き合い始めた頃から料理の勉強をしてたんだ。 「猛さん ずいぶんと上手くなったわねえ。 焼き魚もいい感じだし、、、。」
「そうかなあ? まだまだだよ。」 「そういうところが好きなんだよなあ。」
「調理師になったわけでもないし、専門家でもないからさあ。」 「またまた、、、。」
朝から何の変哲も無い話をしているぼくらなのです。 主夫もいいもんだ。
 最近の涼子はお腹がふっくらしてきたように思う。 「私ね、気になったから病院に行ってきた。」
「病院?」 「そう。 産婦人科。」
「んで何だって?」 「おめでとうって言われたわ。」
「おめでとう。」 「何言ってるの? あなたの子よ。」
「え? そうなの? そうだったか。 ヤッホー!」 「女の子だったらどうする?」
「どうもしないよ。」 「あらあら可哀そうに。」
幸せそうな顔で彼女はお腹をさすりながら子守唄を歌っているのである。 静かに静かに時間は流れていく。
やがてぼくらは新しい命を授かるのだ。 そしたら真奈美にも報告しよう。
生まれてきてくれてありがとうって。

 吉川真奈美さんは山下さんにとって大切な人でした。 でも死んでしまったんです。
とっても可哀そうでした。
 ぼくが涼子と知り合ったのはその頃です。 でも最初は、、、。
まあね、彼はボーっとしてるしあわてんぼうだし忘れん坊だし、急に叫びだしたりする訳の分からない人でした。
でもね、一緒に居るといい人だなって思えるようになったんです。
それで思い切って結婚したんです。
無事に女の子も生まれてくれました。 名前は真奈美。
彼には忘れられなくなるって言われたけど、忘れちゃいけない人だからってこの名前にしたんですよ。
ねえ、真奈美ちゃん。
 そんなわけでぼくらはこれからも平凡な家庭を作っていこうと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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