最強の花嫁は最愛の花婿を守る為に牙を剥く
尊が席に戻ってきた時、壱はヒィヒィと苦しそうに呼吸し、笑い死にする寸前の状態だった。
そんな壱の姿を冷ややかに見下ろし、それから仲間に同様の眼差しを向けて言う。
「…お前ら、こいつに何を言ったの?」
「何って、尊と伊藤さんの馴れ初めだけど。」
サッと青ざめた尊に、壱が目尻の涙を拭いながら言った。
「お、おま…女に電話番号を渡すのにタキシードにバラの花束って…ば、馬鹿じゃねぇの…。」
「う、うるさい!!俺は真剣ですってことを伝えたかったんだよ!!」
「ほら、尊っていまいちパッとしないじゃん。だから俺達が『男なら一張羅でビシッと決めろ!』ってアドバイスしてやったら、何を思ったのか、わざわざタキシードをレンタルしてきて…。」
「うるさい!うるさい!!うるさい!!!」
「で、そこまでした挙句、電話番号を交換してもらえなかった伊藤純花さんが、今さらお前に何の用だったんだよ。」
友人達の好奇心に満ちた目が、尊の顔面に集中する。
途端に今まで子犬のようにキャンキャンと吠えていた尊が大人しくなった。
「べ、別に、何でもねーよ…。」
先程の甘美な体験を、この野次馬根性の塊みたいな連中に話すつもりはなかった。
こいつらのことだ、伊藤さんとのデートが露見したら最後、絶対ついてくるに決まっている。
すると、壱がニヤニヤと笑いながら言った。
「こいつらから聞かせてもらったぜ、お前の数々の武勇伝。これまでも女の子とお知り合いになる為に、相当無茶したらしいな。しかし、相手の名前を絶叫しながら、真冬の川に裸で飛び込むのはどうかと思うぜ。」
「~~~~ッッッッ!!」
悔しさよりも羞恥心の方が上回って、言葉が上手く出てこない。
そんな尊に追い打ちをかけるように、マナが壱の気を引きたい一心で、こんなことを言い出した。