最強の花嫁は最愛の花婿を守る為に牙を剥く
「いい加減、連中には愛想が尽きたんだよ。オメェだって宍戸組のド汚ェやり口は知ってんだろうが。」
「………。」
知らないわけではない。
親である宍戸組が、暴対法以降さっぱり奮わなくなった志藤組に何かと難癖をつけて切り捨てたがっていることは、尊の耳にも入っていた。
「し、宍戸組に宣戦布告するつもりなのかよ、親父…。」
不安げに尋ねる尊に、返事をしたのは通訳を介した『徳懐叔(おじさん)』だった。
「その点はご安心を。我々も事を荒立てるつもりはありません。問題解決には平和的かつ友好的な手段で臨みたいと思っております。」
「平和的かつ友好的?例えば?皆で宍戸組の組長のお誕生日会を開いてやるとか?」
「それはいいアイデアですね。是非皆さんでやりましょう。」
尊は正面のいけ好かない2人組を睨みつけてから、再び父親の方を振り向いた。
「親父、考え直せ。今ならまだ間に合う。こいつらも宍戸組の連中と変わらねぇ。チャイニーズマフィアの常套手段だ。親父を言葉巧みに騙して、組を乗っ取る気なんだよ。」
しかし、部屋に響いたのは鼓膜が破れんばかりの豪快な笑い声だった。
「がーはっはっはっ!その心配なら必要ねぇぜ、尊!何たって劉さんは今日から名実ともに俺達の家族になるんだからよ!」
「…どういう意味だよ?」
眉をひそめる尊の前で、猛がゴソゴソと懐を探り、1枚の紙切れを取り出した。
「…何だよ、これ。」
「オメェ、大学に行ってるくせにこんな簡単な漢字も読めねぇのか?」
「そうじゃない。…何で親父が婚姻届なんか持ってんのか聞いてんだよ。」
尊はテーブルの上に置かれた用紙を見て、不吉な予感を感じざるを得なかった。
まさか…まさかとは思うが…親父が俺をわざわざここに呼んだのは…。
皮肉なもので、嫌な予感ほどよく当たるものはない。
次の瞬間、猛はその強面にはちきれんばかりの笑顔を咲かせ、声を大にして言った。