聖女さまがいっぱい!(聖女ショートショート集)
「で、殿下……」

「初めて見たときから、君のことが気になって仕方なかった。倒れたと聞いて、どれだけ心配したか」

「殿下……」

 目をうるませながら王子を見たときだった。

 聖女は気づいてしまった。

 鼻毛が出ていることに。

 丹精な顔、美しい金髪、申し分ない美形王子。

 の、鼻に、鼻毛。

 聖女の中の何かが、急激に温度を下げた。

「いけません、殿下。わたくしは聖女、あなたは国を背負う王子殿下でいらっしゃいます」

 王子の腕を逃れ、聖女は背を向けた。泣いて見えるように、両手で顔を覆う。

 その瞬間にも、聖女は自分の内側から何かの力が湧いてくるのを感じていた。

 王子は失意とともに王宮に帰り、聖女は無事に力を取り戻した。



〜終〜
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