BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー
私の名前は、宝生妃翠
主に宝飾品を取り扱い、国内でその名を知らない者はいない【宝生グループ】の社長を父に持つ、いわゆる令嬢。
もっとも、私にはお嬢様なんて言葉、これっぽちも似合わない。
おしとやかに振る舞うなんて以ての外で。
むしろ人を寄せ付けたくない雰囲気が隠しきれていないのか、冷たくてお高くとまった性格の悪いお嬢様って陰で言われることは知っている。
それって、悪口じゃないの?
たしかに愛想笑いのひとつも満足に出来ないし、まあ自覚はあるんだけれど。
麻美は「妃翠ちゃんはクールなところが魅力なんだよ!」って解釈してくれているけれど、そんなにカッコいいものじゃない。
ただ単に、人との付き合いがうまくないだけ。
お嬢様だとチヤホヤされるのは苦手だし、遠巻きに見てくれているのは逆にありがたい。