やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 明らかに、フィリップスさんは焦っていた。
 ……何故?


 ぐふっ、とキッチンに居たオルが、何か音を漏らしたのが聞こえた。
 今まであまりにも静かで、その存在を消していたオルだったが、堪えきれなかったようだ。


 フィリップスさんが祖父のお抱え法律コンサルタントだと、オルは知っていたはずだ。
 私の喧嘩の巻き込まれ事故後に、彼が何度も病室に来ていたのは純粋なお見舞いだけじゃなくて事故処理の示談とかそんな打ち合わせも兼ねて来ていたんだ。

 それなのにシアだった時は、含みを持たせた口振りで、私を揺さぶった。
 実はオルは性格が悪いのかも、多分。


 フィリップスさんが29歳の私の恋人なのか、なんて聞かなくて良かった。
 恥を掻かずに済んで、もう、それだけで、嬉しい。



 肝心のフィリップスさんの方は、というと。
 返事を催促する面持ちの私から、初めて視線を逸らせた。 

 そんな口ごもるような質問じゃないよね? 
 無神経だった? 失敗……した?  
 
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