やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
それで怒りに燃えて夜道を歩く私を心配して、跡をついてきてくれたのね。
 知らなかったとは言え、鳥籠の中の鳥、だなんて思ってしまったことを祖父に申し訳なく思う。

 祖父、母、フィリップスさん。
 ……私はずっと守って貰っていた。



「……さて!」


 これで自分の話は終わりだ、と言う様に。
 フィリップスさんはひとつ、両手を合わせて叩いた。
 思っていたより大きなその音に、私はビクッとなったが、オルは身動きひとつしなかった。

 フィリップスさんはキッチンの調理台にもたれて立ったままのオルを手招いた。


「お待たせしました、ここからは君も合流してください」


 ◇◇◇


 リビングのローテーブルを囲むのは、2脚の肘掛け椅子と1台のカウチ。
 呼ばれてこちらへやって来たオルが、当然の様に私の隣に座る。
 隣り合って座る私達を眺める大人の目は、やはり厳しい。


 その冷たい眼差しは……一昨日の夜。
 格好よく話そうとして、聞いてる方が恥ずかしくなるような言葉で声をかけてきたフィリップスさんでも。
 自分のコートが汚れても、優しくパピーを抱いてくれたフィリップスさんでもない。
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