やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 これが、19歳の私と23歳のオルとの、最後の昼食になる。
 金曜の夜まで、この週末はモニカとふたりでどこへも出掛けずに、この部屋で過ごす予定だったから、ふたり分の食料は買い込んでいた。


 私はチキンのトマト煮込みを作った。
 炒めたチキンに潰したトマト、玉葱、茄子、キノコを加える。
 水分は野菜からのみ。
 塩を入れ、味見をしながら砂糖を多く入れるのが私の好み。
 そして水気が飛ぶまで火にかける、ただそれだけ。
 単純な料理で、これだけは食べた人が美味しいと言ってくれる私の唯一の得意料理。


 私の横で、的確な手順で手伝ってくれるオルに、気付く。
 貴方は口にしないけれど、きっと……
 同じ部屋で暮らす私達は、この料理を何度も並んで作ったのね。
 いつも料理は貴方にお任せなのに、これだけは10年後の私もはりきって作ってたんだね。


 昨夜あんなにモヤモヤして嫉妬していたのに。
 今、心は凪いでいた。


 良かったね、私。
 きっとこの料理だって、オルが作った方が手早くて美味しいんだと思う。
 だけど、彼はサポートに徹して、私が得意にしてるからと段取りの悪さを見ないふりして。
 味付けも、火を止めるタイミングも任せてくれている。
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