やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「死病ではなかった。
 医者の口振りから、ハイパーがそう思い込んだだけで」

「何なの、それ……死なずに済んだのは本当によかったと思う。
 だけど、そのせいで私はモニカに毒を盛られてしまうんでしょう……?」


 オルとの同棲が始まって、幸せの絶頂に居たはずの私。
 私は何がしたくて、夫に冷遇されていたモニカと会ったのだろう? 


 自分の愚かさに眩暈がする程だ。
 私は知的で慎重な女じゃなかったの?
 憎まれていると分かっていながら、モニカにのこのこ会いに行く、って何を考えていたの?
 その結果、毒を盛られるなんて!


「クレイトンからやって来たモニカに呼び出された君は、俺に黙って会いに行った。
 カフェの屋外テーブルに最初ふたりは座ったんだが、途中で急に天候が崩れて。
 屋内席へ移動する際に、モニカは自分のカップに毒を入れた」

「私のカップに、でしょう?」

「モニカは自分のカップに用意していた毒を入れた。
 テーブルを移った時に、ふたりのカップを給仕が取り違えてしまったんだ。
 彼女の目的は君を殺すことじゃなかった。
 君の目の前で自殺することだった」



 パピーが狂った老婆から折檻されたことを、淡々と話していたシア。

 その時と同じ瞳を、オルはしていた。

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