やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 同じ王都大学地区と呼ばれるエリアに住んでるとはいえ、私の住んでるフラットとシドニーのシェアハウスは広大な大学構内を挟んでの端と端だ。
 徒歩で帰宅するのはまず無理だった。


 …と、言うわけで。
 流しのキャブが走っている大学生向けの飲食店が集まっている賑やかなエリアまで、夜道を歩くしかない。
 大丈夫、少しの距離だから、と私は覚悟を決めて、夜道を歩き出す。
 そのエリアまでは学生の住む界隈なので、多少お酒に酔ってる人が居ても、同じ学生だし大して怖くはない、はず。



 今でもまだ胸と喉の辺りに大きな塊が詰まっているようで。
 おまけに目の奥が熱い。
 涙が流れないように、唇を引き結ぶ。


 泣き出せたら気持ちがいいのは分かっている。
 だけど、まだ我慢しろ、しっかりしろ、と自分を奮い立たせる。
 部屋まではもたせたい。
 こんなところで潰れたくはない。
 泣くのは自分のベッドで、と昔から決めている。
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