やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

 ふたりに、周りに。
 心の矢を射るように、言葉を放った。

 辺り構わず乱射して。
 それが誰かに刺さったか、なんて確認する余裕はなかった。
 シドニーから、ジェンと呼ばれたことに。
 私の身体は指先まで冷え冷えしていたのに、またカッとなってきて。


「さようなら、ハイパー先輩」


 さようなら、さようなら。
 勢いに任せて、シドニーの部屋を飛び出した。
 頭に血が上っていたのに、ちゃんとコートとバッグを掴んで出てきた自分を褒めたい。


 ただ、帰る足を確保していなかった。
 シドニーの部屋がある通称大学通りには、事前に予約を入れてキャブを呼ばなくてはいけなかった。
 当然、私もパーティーの終了時間を考慮して、モニカと共にお暇する時間に合わせて予約していたが。
 途中でひとりで帰る羽目になってしまって、今から手配は出来なかった。
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