やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 モニカの持ち物の中には、そんな内容の遺書と。
 シドニーとふたりでサインした離婚届が入っていた。

 



「領主夫妻がふたりとも、クレイトンを捨てようとしたの?」

「誰にも相手にされないモニカは、最後に君に縋ろうとしたんだ。
 一緒に住むのを断られたら、目の前で死のう、と毒まで用意して」

「だから!どうして、目の前で死ぬの!」

「皆が自分を居ない者のように扱うから。
 君には一生、覚えていて欲しいから、そう供述したよ」


 
 私には分からない。
 どうして自分が死ぬ理由を、人に押し付けるの?
 貴女が断ったから、私は死ぬ?
 私をずっと覚えていて?



 分からない、分からない、理解したくもない!
 どこまでひとに甘えるの。
 自分の人生は、自分で責任を取らなくてはいけない。
 自殺の理由を責任転嫁しないで!


「離婚前でまだ妻だったモニカが逮捕されても、ハイパーは帰国しなかった。
 誤って毒を飲ませてしまったが、それは給仕のミスがあったから。
 君が命を落とさなかったのは、助けようとモニカがその場で水をたくさん飲ませたからだ、と彼女の弁護士は力説した。
 何より彼女は伯爵家の当主で、君は平民だ。
 女王陛下はこの事件が国民に広まらぬように、裁判ではなく示談で、と示されて」
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