やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 長男のゼイン伯父はムーア全体の後継者だから祖父とふたりであらゆることを決めていく。
 そして、それは公表されるまでご自分の奥様にも話さない。


「ジェリの顔をしたお前は、何者だ?」

 祖父が見せた怯えたような表情は、私が初めて見るものだった。


 ◇◇◇


 祖父はせっかちなので、ぐだぐだ話されるのがお嫌いだ。

 私は出来る限り簡潔に、自分が3年後にオルの時戻しの魔法にかけられて、16歳をやり直すことを選択した理由と経緯を話した。
 話す途中、祖父は口を挟まず、黙って聞いていてくれた。


「お前に借りようと今から押さえているフラットのことやオーウェンの名前を出されたら信じないわけにはいかないな……
 時を戻せる魔法士?……6歳年下……はぁ。
 いつかは紹介しようと思っていたオーウェンとも、もう会ったか……
 今夜の会食であいつに会うが、顔だけでも見ていくか?」


 そうか、もうこの年にはフィリップスさんは祖父のビジネスの場に同席してるんだ。
 顔を見たい気持ちはあったが、それは辞退した。
 私達が知り合うのは3年後だ。
 オルには人の生死に関わらない限り、行動は規制されない、と言われたけれど。
 いい関係を築けている相手との運命を変えたくはない。

 第一にフィリップスさんには好きなひとがいる。
 祖父は昔から気が付いていないの?
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