やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「ですが、これは嘘ではありません。
 証があるので、聞いてください」


 丁度、祖父の方からフレデリックの話題を出して貰ったのだ。
 彼のこれからの話をしようと思った。


「来年2月のフレディの誕生日に、お祖父様は彼にクリスタルホテルのドアマンの仕事を始めるように伝えます」


 クリスタルホテルは祖父の次男であるライル伯父が社長を務めていて、ゆくゆくはフレディが後を継ぐ。
 祖父はフレディに『ムーアであることを隠して大学の学業の傍らにドアマンの非正規の仕事を始めること』を命じたのだ。 


 祖父は誘拐を恐れて、ムーアの子供達を成人前は人前に出さないようにしていた。
 学生の間は、学籍ではムーア姓だが配偶者のファミリーネームを名乗らせる。
 フレデリックは、家庭事情を知らない人からはフレディ・グラントだった。
 だからこそ、このようなことも出来る。


「……フレディの件はまだライルにも伝えていない。
 私とゼインが話し合い始めたところだ。
 お前が知るわけがない……」
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