やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 ……これを、これからの毎月里帰りの理由にした。

 交通費の迷惑はかけない。
 そのためにシーズンズで働く。
 勿論、学業は疎かにしない。


 祖父が父に伝えてくれた理由を、改めて自分の口から両親に告げると、父は嬉しそうな顔をして、母は微妙な顔をしていた。
 母からすると、私は将来ムーアで働くと決まっているのに、領内のことをそこまでして知る必要がある?なんだろう。



 孤児院へモニカを迎えに行くモンドに声をかけて、荷馬車から二頭立て馬車に変更して乗せて貰った。


「お嬢様が帰っていらっしゃるのを、モニカお嬢様も楽しみにしておられたから、反対にお迎えに行かれたらお喜びなさると思いますよ」

 馬車に乗り込む私に、モンドが手を貸してくれながら言う。
 モニカが私の帰省を喜ぶなんて本心なわけないのだが、私は『嬉しい』とにっこり笑った。



 モニカは慰問の時はいつも荷馬車で送迎して貰い、慎ましやかな印象を皆に与えているけれど。
 普段は荷馬車には乗ったりしない。
 モニカがいつも乗る……紋章入りの二頭立てでお迎えに行ってあげよう。
 貴女の、私こそが伯爵家の後継である、という矜持を尊重して、ね。


 聖女信者はモニカが慰問に通っていた孤児院出身者が多かった。
 3年後に爆発した彼等が育った環境は目にしておきたかった。


 普段の聖女様を、熱心な信者となる子供達に教えて差し上げましょう。
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