やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

 領内の孤児院を管轄しているのは教会だ。

 といっても、神父様達は殆どタッチしていなかった、と思う。
 実際運営をしてくださっていたのは、教会の世話役の方達だった。

 運営費は、母達が協力していた教会主催のバザーの売り上げが少々と、善意の寄付と。
 大部分は伯爵家から出ていた。
 ……それなのに、彼等は父を取り囲んだのだ。


 孤児院の敷地に馬車が停まると、小さな子供達が近付いてきた。


「お姉ちゃん、だあれ?」

 鼻の頭に小さな泥を付けた女の子が、降りてきた私に早速声を掛けてきた。
 良かった、紋章を入れた馬車だ。
 遠巻きにされるか、無視されるか、そのどちらかだと思っていた。
 この子達にはまだ、現伯爵家への憎しみはない。



「モニカの従妹で、ジェリーと言うの。
 今日はモニカを迎えに来たんだけど、これからは私もここに遊びに来るから、よろしくお願いします」

「本当なの? お姉ちゃんも遊びに来てくれるの?
 クッキー焼いてきてくれる?」

 食い気味に女の子が言って、それを聞いた子供達が三々五々集まってきた。
 モニカはクッキーで胃袋を掴んだな。

 だからと言って、では私も焼いてくるね、と言えない。
 人様に食べていただけるものを作る腕がない。
 ここは母に頭を下げてお願いするしかない。
 子供達にと言えば、元々はおおらかだった母は駄目だとは言わない。


「クッキーはモニカが持ってきてくれるんだよね?
 じゃあ、お姉ちゃんはケーキを持ってくるから、全員で何人居るのか教えて?」
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