やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 それを聞いて、メリッサが嬉し泣きをしてくれたので、私も少し泣いてしまった。
 前回は貴女の悩みに寄り添えなくてごめんなさい、という気持ちからだ。



 泣き虫のオルと知り合ってから、本当に涙腺がおかしくて。
 強かった私を返して!と彼に文句を言いたくなる。


 ……祖父には、クレイトンの孤児院にオルと呼ばれる子供が居ることは伏せた。

 中身が19歳の私は祖父が優しいだけの人じゃないことを知っている。
 あのふわふわした父を婿と受け入れたのは、それなりの計算があったからだろうし。

 今は、多分フィリップスさん以外の人を使って、10歳のオルシアナス・ヴィオンを捜索しているだろうことも、察している。
 もうフィリップスさんと私を、どうこうする気はなくなったと思う。

 今はそれよりも、時戻しをする魔力を持ち、王族専属になるオルに興味を持っている。
 祖父は切り換えが早いから、とにかく誰よりも早くオルを囲い込みたいのだと思う。

 あの孤児院のオルくんが、私のオルであろうとなかろうと。
 魔法学院へ入学する前の子供を、祖父に近付けさせたくはない。
 大好きな祖父に対してさえ、こんな考え方をする私は、紛れもなくムーアの人間だ。
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