やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 クララに聞こうか、と思っていたら。
 視界の端に、前回私に『嘘つき』と言い、私の嫌味の被害者にさせてしまった少年が居たので、駄目元で彼に近付いた。
 彼も私という外敵がずんずん突進してきたのを避けられず、またもや嫌そうな顔をした。


「この前は君に、嫌なことを言った!
 ごめんね、謝らせて」

「……」

「本当にごめんなさい。
 おとなげなかったね、年下の君にむきに……」

「おい! この前からなぁ、君、君、って偉そうなんだよ!
 大して年も変わらないのに、上から言いやがって」

「私、年上だよ? 16だもの。
 君はまだ、初等学校じゃないの?」

「……16だったら、3つ違うだけだろ!
 偉そうに君なんて言うな!
 俺はベンだよ、名前で呼べよ」


 13の少年に名前を呼べ、と言われて。
 別れる直前のオルを思い出した。
 ……これからも誰かから『名前を呼んで』と言われる度に、胸は疼くの?



「あー、ベン、私はジェリーだから。
 ぜひ、ウチが買ったら車に乗ってね?」

「仕方ねーな! 乗ってやるよ」

「小さい子達が先だからね?
 大人のベンは最後だよ?」

 謝っても、生意気なことを言われたら、ちょっとした意地悪は忘れない私だ。


「えぇっ……ジェリー?」


 という感じで、なんとなく。
 ベンと私は休戦協定を結ぶことが出来た。
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