やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 ベンのモニカへの信仰は止められないかもしれないけれど。
 彼等とは自分から歩み寄って、会話を持てば。
 あの3年後の未来は避けられるかもしれない。

 
 そんな希望を持たせて貰えた、ベンとの協定だった。
 嬉しくなった私は、良くないところを出してしまった。
 ベンにオルくんという10歳の男の子がここに居ないか、聞いたのだ。

 たちまち、ベンは警戒の表情を浮かべた。


「オル? あんた何なの? 何で? 」

 さっきはジェリーと呼んでくれたのに、もうあんたにされてしまった。
 やはり休戦は休戦で、終戦ではない。


「あの、あの、この前帰りがけにモニカが、怪我をしてるんじゃないか、とか心配してたでしょ?」

「あぁ、あんなの……」

「で、オルくん、今どこ!」

 食いついてしまうのを止められない。
 ずっと私の手を握って、静かに私とベンのやり取りを聞いていたクララも驚いて、私を見ているのがわかる。


「……オルなら、今は居ないよ」

 思いきり、口元を歪めてベンが言った。
 今は居ない?
 何も言わずにそっぽを向いたベンに代わり、クララが私の手を引っ張った。


「お姉ちゃん、オルくん、週末お試しで、朝から明日の夕方まで居ないの」 

「……オルくんの名前は……オルシアナス?」


 クララが頷いた。
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