やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 食後、祖父の書斎に通された。
 寮の門限は親族と一緒の時に限り、21時まで延長されるが、あまりゆっくりもしていられない。

 時間が惜しくて祖父に書斎で、と私から頼んだ。
 こんな時、性格がせっかちと言われる祖父は話が早い。
 前置きに時間をかけない。


「シドニーの本名は、サイモン・デイビス。
 出身は南部のセントハーバーで、侯爵家のバーバラ夫人の遠縁の、遠縁の孫だ。
 祖父の代で爵位を返上しているから、早い話が今は平民で、侯爵家の当主セドリックとは全く血の繋がりはない」


 デイビス……金髪の人懐こい女の子の笑顔が思い浮かぶ。
『お兄ちゃんが迎えに来る』と教えてくれた、クララ・デイビス。
 シドニーが大切にしていた、ガタガタの花が刺繍されていたハンカチ。
 


「エドワーズの次男の本物のシドニーは10歳前後で亡くなったが、その届けをセドリックは出さなかった。
 この時点でハイパー家の財産は減り続けていて、シドニーの婚約者のヒルデ・フラウ・グーテンダルクの実家から多額の借金をしていたからだ。
 貴族なんて大体は、次男は嫡男のスペアくらいにしか思っていない連中だから、きちんと弔わなくても心が痛まないんだろう。
 遺体をどうしたかは、考えたくないな」
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