やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

36

 クレイトン17:15発のセントラル行き最終便に乗って行ってしまったデイビス兄妹。
 と……私の父。

 元々この最終便で帰る予定だったサイモンの2等チケットを払い戻して、父が個室1室料金を支払って、3人で行ってしまったのだ。


「だってジェリー、貴女悪い大人がと言ったでしょう。
 子供達を無事にお祖父様が預かるところまで、見届けないとね」
 

 ……個室なんて、私は乗せて貰ったことはない。
 モニカを含めて、家族全員で王都へ行った時だって、1等車両だったよ?
 ……まあ、でも。
 王都到着は23時を過ぎてしまうので、クララがゆっくり眠れるのなら個室が一番いいかな。


 でも父が一緒でも、護衛にはならないよね?
 荒事から一番遠い場所で『皆大変だよねぇ』なんて眺めていそうなひとなのに。



「あぁ見えて、喧嘩は負け知らずなのよ。
 大丈夫、大丈夫、心配ないの。
 大学では拳闘部のスタアだったから」

 私の大学の拳闘部は見るからに、の人が多くて、優男の父が入部していたのは意外だった。
 そう言えば、父の整った顔パーツのなかで、鼻は少し左に曲がっていた。


 ノックスヒルでの、その夜のディナーの席で、母がスタアだった頃の父を『蝶の様に舞い……』と自慢げに話している。
 意外にもモニカは席に着いていて、黙って食事をして。
 
< 318 / 444 >

この作品をシェア

pagetop