やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 この子を引き渡して、それから夜道をひとりで帰るのは怖いから、警邏のついでに送ってください、と頼んでみようか。
 それで万事解決!のはずなのに。


 パピーがすがる様に私の腰に抱きついたので、路上に膝をついて抱き締めた。
 どうしてこんな、会ったばかりの真っ黒な小さな子供に心を掴まれちゃったんだろう?


 頭からは早く連れていけ、と指令が発令されているのに。
 この腕はパピーを抱き締めて、この胸は別れが辛くて震えてる。


「痛っ……」

 パピーが小さく呻いた。
 私がパピーの背中に回した手の。
 掌に当たった感触に、違和感があった。

 ゆっくりと自分の掌を見た。
 その独特の粘り気が、ツンと鼻につく匂いが。
 それが何なのかを、はっきりと伝える。

 それは血だった。
 
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