やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 肩からずり落ちそうなぶかぶかの大きい服。
 パピーの背中は服にまで血が染み込んでいる。
 今まで気付けなかった。
 私の意識はおじさんにだけ集中していて、手荒に扱われたパピーのことは後回しにしていたのだ。
 
 その小さな背中に、パピーは深傷を負っていた。

 
 どうして先ずはこの子の体調に気遣えなかった?
 一体、いつ怪我をしたの?

 おじさんが何かしたようには見えなかった。
 じゃあ、私と知り合う前に?
 ぶつかった時、既に背中はこの状態だったの?


 顔をしかめて、痛みを逃すためか、大きく息を吐いたパピーを前にして。

 しばらく呆然としていたので、かけられた声に直ぐに返事が出来なかった。


「その子は、怪我をしているようですね?
 貴女の力になりたいのです。
 貴女の侠気に心を奪われたこの僕に、お手伝いさせて下さいませんか?」
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