やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 サイモンが頷いたのが、薄闇のなかでも確認出来た。
 違和感だらけの話に、答えが見えてきた気がする。
 シドニーが大学でも続けて帝国語を選択していたのは、このためなんだ。


「13年後のことは、私が寝たきりであるということしか分かっていません。
 その時にクララちゃんが無事でいるのか、知らないんです。
 でも、私が毒を飲んだ前後の11年後のことなら想像はつくんです。
 真実ではないかもしれませんが」


 今の、契約終了するまではきちんと働きたい、と祖父に甘えないサイモンの人間性が、11年後も変わっていないとするなら。


「貴方が余命わずかだと誤解したのは、自分のことではなく、クララちゃんのことだったのではないでしょうか。
 私の知ってる先輩は体調管理に気を付けていましたし、病弱な妹が居ながら、自分の余命をはっきりと告げられてもいないのに、誤解するようなタイプではないように思えます」


 前回もサイモンがクララの手術代を稼ぐために大学に通っていながら力仕事を続けていたのなら厳しい学業と両立するために健康には気を付けていただろう。

 実際に私が知る限り、シドニーは風邪ひとつ引いたことがなかった。
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