やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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「傷を見ただけで、鞭だと分かるんですか?」

「猛獣を調教するために使用するような長く振り回す鞭ではなくて。
 貴女にも、そう貴族のご令嬢なら、マナーがうまく出来なかった時、家庭教師が手を出しなさいという、あの短くて細くて、そのくせ与えるダメージは大きい、あの恐怖の、愛の鞭と言い張る、覚えていませんか?」

「家庭教師に鞭なんて使われたことはありません。
 父がそんなことを許すはずありませんもの」

「さぞや素晴らしいお父上なんでしょうね。
 あの鞭の恐ろしさを知らない貴女は恵まれたひとですね」


 何故だか皮肉を言われた様に感じたけれど、気のせいかも知れない。


「これから、夜間病院に連れて行きます」


 私の鞭打ち経験の話より、今はパピーの傷の治療が先だ。
 痛みと疲れと安心感からか、眠りに落ちたパピーを受け取ろうと、手を伸ばしたのに渡してくれない。


「病院で受診するのはお勧めしませんね」
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