やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「ジェラルディン・キャン……」

 フレディと呼ばれた男が、素早く彼女の口を塞いだ。


「本当に、失礼します」


 半ば引きづられるように、手を引かれていた。
 他人に名前を知られてはいけない。
 ただのガキではない、そんな家の娘なんだと思った。
 ジェラルディンが俺に向かって小さく手を振っていた。



 翌日も、翌週も、何回も。
 図書館へ行ってみたが、2度と会うことは無かった。



 何年か経って、アレが入ってきて。
 俺は指導教官になった。

 個人授業の合間にアレと話をする。
 孤児院の話はあまりしたくないようだったのに、ディナと言う女の話は何度も聞かされる。

 口のうまい、6歳も年上の女。
 そんな女を忘れられない馬鹿。


 やがて、俺はそのディナの本名がジェラルディン・キャンベルで。
 茶色の髪と茶色の瞳の女だと知った。


 耳障りの良い毒を吐いている自覚もない女だ。
 アレのような被害者を、増やしてはならない。



 生きたままのこいつと一緒に。


 瞳を褒められたことを忘れられず。
 浮わついていた16の俺も埋める。


 
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