やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 オルの金色の瞳は潤んでいて、肩で大きく息をしていた。
 それでも、私の顔を見て、少し笑ってくれたような気もするけれど、とにかく彼の顔は血塗れで、幾つ傷が付けられているのかも分からない。


「ディ……ディナ……けが……してな……い」


 自分が傷だらけなのに、私の怪我を心配してくれる。
 そして震える手を私の方へ伸ばしてくれる。
 当然その手も血に濡れていて、掴んだ私の手も彼の血で濡れた。


「オル、オル、もう無理に何も言わなくても」


 オルの手を握り、泣きそうになった私に、師匠が説明してくれた。


「キャンベル嬢、済まないね。
 こいつは今『魔力喰い』の最中で、身体の中に別の魔力を取り込んで、徐々に馴染ませているところでね。
 言葉もうまく話せないんだ。
 それと、結構出血してるみたいに見えるけど、これ半分以上はスピネルの血だから」


 それでも、半分以下はオルの血で。
 出血量が尋常じゃない。


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